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パニック障害は治る

パニック障害は治る
渡部芳徳,2005,主婦の友社
ISBN 4072476633

パニック障害は,古くは「不安神経症」の一部として扱われてきた心の病気で,正式に疾病分類のひとつになったのは1990年代である。突然,不安や恐怖の発作がおそい,動悸,目眩,吐き気等ともに,くりかえされるもの。

本書は,パニック障害の基礎知識からはじまり,薬の飲み方や認知行動療法その他の自分でできる知識を実用的に解説している。なかでも うつとパニック障害の関連についての知識は非常に有用であると思われる。自分だけで治せるわけではないが,自分が知っておくと,それだけで,病気への対処が有効になるような知識が満載。

[ 内容や目次 ]
# by tsu2k | 2006-03-22 23:34 | 心理学本

こころが晴れるノート

こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳
大野裕,2003,創元社
ISBN 442211283

認知療法とは,アメリカの精神科医ベックによって考案された精神療法のひとつで,情緒障害を認知における障害として扱い,認知パターンを改善することで治療を試みるものだ。近年その有効性が認識されて,活用されるようになってきている比較的新しい精神療法である。うつ病やパニック障害だけでなく,普段我々が不安を感じたり人間関係に悩んだりする場合にも同様に有効であるとも言われる。

本書は,認知療法を身につけるには具体的にどうしたらいいのか?を,ワークブック形式で,演習を通じて自習できるように構成されている。もちろん非常に平易な言葉で認知療法やその背景となる理論の骨子をわかりやすく説明もしているので,単にハウツーだけの実用性のみを追うものではない。

本書を手に取る人は,実際に,うつのように気力を持てない状態であることが想定される。そのときに,あまりに難しい内容ではとても読破できないだろう。しかしワークブック型であり,厚さも適度で,解説は平易,装丁や文字フォントも優しげである。ちょっとやってみようかな?という気分にさせてくれるのではないかと思う。気分が沈みがちだったり自分でも理由のわからない不安を感じることがある人は,一度ながめてみてはどうだろうか。

[内容や目次]
# by tsu2k | 2006-01-09 16:32 | 心理学本

錯覚の心理学

錯覚の心理学
椎名健 , 1995 , 講談社 (現代新書1233)
ISBN 4061492330

そこに無いはずのものが見える,逆に理屈では分かっているのにどうしてもそうは見えない。まるでTVの好むうさん臭い現象のようである。よく勘違いやうっかりミスを「それは錯覚である」という。この場合,ありもしないものを誤って思いこんでいるという誤認の意味で錯覚を捉えている。さらには人間の感覚はいい加減なものなのだと思いこんでいる人も多いだろう。

しかしながら実際の錯覚と呼ばれる現象は決して気の迷いや誤ったネガティブな感覚などではなく,ポジティブな合理性のある内的システムが引き起こしている。多くの場合,その副作用的側面が強調されるために上のような思いこみも起きている。一般の人にみられる,この「錯覚現象をネガティブなものだとすること」自体がまさに錯覚なのである。

本書は少し古いものだが,代表的な錯覚現象およびその仕組みの紹介や珍しい錯視の話なども含んでいて,見て・読んで楽しい。講義でも錯覚実験を組み込んでいるが,レポートの際には,本書を参考書として推奨している。学習向けなので,ちょっと理屈っぽいかもしれない。

[内容や目次]
# by tsu2k | 2005-03-31 12:34 | 心理学本

「ケータイ・ネット人間」の精神分析

「ケータイ・ネット人間」の精神分析
小此木啓吾,2005, 朝日新聞社(朝日文庫)
ISBN 4022614587

ケータイやネットの普及と大衆化によって,一般の人でも効率的な情報交換が可能になった。まさにIT革命である。しかし著者・小此木啓吾は,この革命は同時に,ネットを媒体とした,さまざまな引きこもりの心性を助長する物であるとの観点を持っている。前にも紹介したように著者は精神分析学の専門家であり,過去にはあり得なかったネット社会が持つ人間精神への影響の分析を,現実感の喪失,引きこもり,自己愛,モラトリアム,スーパーウーマン挫折症候群などのキー概念を使って試みている。

今回ここへ紹介するために再度読み返してみた。IT技術的な記述はすでに5年以上の年月が流れているので,現在時点での状況と多少の違和感はやむを得ないが,まだ未成熟なネット社会に既に萌芽しつつある仮想現実への引きこもりの病理を非常に的確に捉えていたことに感心した。また既にネット依存的な症状を持っている私(tsu2k)は以前読んだときよりもむしろ自己認識の切実性やこれらの現象への社会的認識不足を再認識させられた。ケータイメールやネットにはまっている人・はまっている家族を持つ人はご一読いただきたい。

※本書は「ケータイ・ネット人間」の精神分析,2000,飛鳥新社の文庫化である。

[内容や目次]
# by tsu2k | 2005-03-18 16:48 | 心理学本

血液型性格研究入門

血液型性格研究入門 : 血液型と性格は関係ないと言えるか
白佐俊憲, 井口拓自共著,1993 ,川島書店
ISBN 4761005076

現在では,自己紹介のときに「A型の~座です」とする若い人が多い。これでその人となりをわかれということなのだろう。このように多くの人に認知された非科学的信念のひとつが血液型性格判断である。
本書は,前提として否定的な立場からではなく,科学的に取り扱ったデータを示して,自らが判断して欲しいという方針で書かれているようだ。多様な観点からの統計的研究・実験的研究を紹介している。
それらを見ると,科学的方法で得られた組織的なデータには血液型と性格に関係があるといえる根拠となるものは,ほぼない。個別の関連性があるとするものもあるのだが,複数のそれらは互いに矛盾していて全体としてみて根拠とはならないだろう。これだけのデータがあっても一般にはむしろまったく知られていないという点も驚きである。
私は血液型性格判断の真偽よりも気になるのは,なにごとであれ盲目的に信じ込んでしまうことの危険性である。信じ込んだ人たちはどれほどの根拠があってそれを信じたのだろうか?職業柄,そちらのほうがずっと興味深い。以前紹介した書籍にもあるように,人の意図的でない判断はそれほど合理的でないのである。

[内容や目次]
# by tsu2k | 2005-03-07 15:10 | 心理学本