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クリティカルシンキング

クリティカルシンキング
ゼックミスタ&ジョンソン,宮元博章他訳,1996,北大路書房
ISBN 上476282061X, 下4762820938

 一般に,英語のcriticalは「批判的」と訳されるから本書の原題は批判的思考となるだろう。しかし訳者たち同様私も「批判的」という日本語には英語のcriticalよりもずっと否定的な意味合いを強く感じる。そこで訳語を当てないでクリティカルシンキングとそのままにしたようだ。内容は欧米圏で重視されている論理的思考の技術観を背景にして,どうすれば人が本来持ちやすい非論理的・情緒的思考から自由になって,分析的・論理的思考が出来るのかを,取り扱っている。その心理学的な裏付けとなる知識・原理を「クリシン原則」として示しつつ,演習に解答しながら学習が進められるのが特徴である(その意味で大学の演習テキスト用だと思われる)。
 例えば,「前-後論法の説明を信じてしまう前に,同時発生や自然発生の原因がないか考えよう」という項目を例に見てみる。(以下の例自体はtsu2kの創作である)毎日5分間の特別な育児法を用いたら,前にはできなかったこんなことができるようになった。これはこの特別な育児法のおかげである(ここが前-後論法)といわれ,データを示されると,簡単に信じてしまう人もいる。しかし実際にはその育児法を用いなくても(!)成熟という自然な原因で子どもはできるようになったのかもしれない,など。
 本書には,心理学的な裏付けとなる原理を知るだけでなく,どうすればそれを応用できるかを実際に訓練できる実用性もある。自力で演習・活用するのはやや難しいので,読者が学生ならば心理系などの適切な指導者について演習するのが望ましいだろう。

[内容や目次]

日本語版は上下2巻となっている。
by tsu2k | 2005-02-18 00:11 | 心理学本
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