あなたの身近な「困った人たち」の精神分析

あなたの身近な「困った人たち」の精神分析 : パーソナリティそのミクロな狂い
小此木啓吾,2000 , 新潮社(新潮OH!文庫)
ISBN 4102900527

 例えば,ちょっと普通でないワンマンな人,自己中心的な人,しっとと執着心に固まった人,何に対しても反抗してくる人などなど…はっきりと異常であるとは指摘できないものの,なんだかおかしい。こんなあなたの身近にいる困った人たちとどうかかわりあうのがよいのか。人格(パーソナリティ)のミクロな狂いをキー概念にして,その背景にある仕組み,そこから読み取れる対処法などを,豊富なサンプルで解説してくれる。
 パーソナリティ障害は病気である。本書ではそこまでの症状はないものの常に周りの人間と摩擦を起こし,人間関係問題を生じてしまう,予備軍の人たちのパターンを示している。読んでいる内に,実は自分たちにも(自覚できないが)こういったミクロな人格のゆがみはあるのだろうと気づく。前掲の「精神科へ行こう」の解説文にあった「まったくゆがみのない精神など,この世には存在しない」(中島らも)という言葉も思い出される。

[目次や内容]

[参考] 小此木啓吾は,精神科医。「モラトリアム人間の時代」他,著書多数。私にとっては,アイデンティティの喪失や山嵐のジレンマの話などが浮かぶ人。
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# by tsu2k | 2005-02-26 17:42 | 心理学本

人間 この信じやすきもの

人間 この信じやすきもの迷信・誤信はどうして生まれるのか
ギロビッチ,守一雄他訳,1993,新曜社
ISBN 4788504480

 何もないところに何かを見てしまう,わずかなことからすべてを決めてしまう,
思いこみで物事を見る,みたいものが見えてしまう,うわさを簡単に信じる,
超能力を信じてしまう,みなも自分に賛成であると思いこむ・・・身近にこんな人がいないだろうか?いや私もあなたもそういうときがあるのではないか。
 これらは人間が本来持っている認識のゆがみからうまく説明されるものであるが,実は当の本人は意識できないことが多い。前出のクリティカル・シンキングはこういう誰もが陥りやすいゆがみを意識させて論理的な態度や思考を身につけるためのものであるが,この本はゆがみがどうして問題なのか,信じることがどういう場面では危険なのか,それを教えてくれる。
 
※少し古い本(しかもハードカバー)だが,この分野ではぜひ読んでいただきたいと思えるものの一つである。

[目次と内容]

[参考] 気まぐれ心理研究所・研究室の「非科学的信念」の話を読む
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# by tsu2k | 2005-02-21 19:05 | 心理学本

脳と心をあやつる物質

脳と心をあやつる物質
生田哲,1999,講談社,ブルーバックスB1269
ISBN 4062572699

 心は見たり触ったりできる物質ではない。しかし物質である脳にさまざまな微量物質が与える変化によって影響をうける。同じ人間でも,頭が冴えるときとぼけているときがあるし,心の晴れた日もゆううつな日もある。それらの内側にはその状態を引き起こしている精緻で巧妙なメカニズムが存在しているのである。
 心を機械論的にみなさいといっているのではなく,驚くほど単純な物質によって引き起こされる複雑な心の変化があることを知っておいて欲しいと言うことである。生命や心を必要以上に神秘的なものと思いこんだり決めつけたりしないで,いろいろな見方をできる・理解するためにも,生理学的・生物学的基盤についての概略のひとつ,心理薬理学的な見方に触れるのにはわかりやすい本である。

 ※薬理学など自然科学的な領域に置いて,それらの知見は日進月歩であることはいうまでもない。新発見や新発明は1日の内に大きく科学全体の見方を変えてしまうことすらあるだろう。従って本書の書かれた時代での物質役割の理解などの点で,現代の知見とは異なるものをあることを承知しておいて欲しい。興味を持ったりより実用的にこれらを使用するつもりならば,本書では概略を知り,専門書や専門研究雑誌で最新の知見を得るためのガイド・ヒントとして利用するのだという姿勢でいるのが望ましい。

[目次や内容]
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# by tsu2k | 2005-02-18 15:04 | 心理学本

自分が分かる心理テスト2

自分が分かる心理テスト2(エゴグラム243パターン全解説)
芦原睦, 1995, 講談社,ブルーバックス1063
ISBN  4062570637

 エゴグラムは心療内科などでよく用いられる心理テストで交流分析という理論に基づいてつくれらたものである。心を父親的,母親的,大人的,やんちゃ子ども的,ぶりっこ子ども的の5つの働きに分けて,それぞれの強さと全体のバランスを見る。対人関係の特徴を知り,実生活に役立てられる実用性がある。今自分がどういう5つの心の働きのバランスを持っているか知って,そこに潜む問題点(実はある種のエゴグラムパターンにはなりやすい病気があるという。例えば頑固親父パターンは高血圧など)やどうすればそれらをバランス良いものにしていけるかを考えるためにも,詳しい説明があるのが望ましい。

 本書はそれぞれの心の強さをABC3段階に評定した場合の全243パターンについて,どういう特徴を持つのか,どういう点が問題になりやすいか,どう対処すべきかのヒントまで書かれている。エゴグラムは性格のように比較的変化しにくいものではなく,心構えや気分により変化するものである。自分を知って心のあり方から来る身体的な疾病を防いでいきたいものだ。

[内容や目次]

※なおエゴグラムや交流分析への興味が有れば,同著者のパート1「自分が分かる心理テスト」も参考になるだろう。

[参考] 著者・芦原睦は中部労災病院心療内科の医師。わかりやすいポピュラー解説書も多く執筆している。Webcat plusで探すと簡単に見つかる。
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# by tsu2k | 2005-02-18 00:20 | 心理学本

クリティカルシンキング

クリティカルシンキング
ゼックミスタ&ジョンソン,宮元博章他訳,1996,北大路書房
ISBN 上476282061X, 下4762820938

 一般に,英語のcriticalは「批判的」と訳されるから本書の原題は批判的思考となるだろう。しかし訳者たち同様私も「批判的」という日本語には英語のcriticalよりもずっと否定的な意味合いを強く感じる。そこで訳語を当てないでクリティカルシンキングとそのままにしたようだ。内容は欧米圏で重視されている論理的思考の技術観を背景にして,どうすれば人が本来持ちやすい非論理的・情緒的思考から自由になって,分析的・論理的思考が出来るのかを,取り扱っている。その心理学的な裏付けとなる知識・原理を「クリシン原則」として示しつつ,演習に解答しながら学習が進められるのが特徴である(その意味で大学の演習テキスト用だと思われる)。
 例えば,「前-後論法の説明を信じてしまう前に,同時発生や自然発生の原因がないか考えよう」という項目を例に見てみる。(以下の例自体はtsu2kの創作である)毎日5分間の特別な育児法を用いたら,前にはできなかったこんなことができるようになった。これはこの特別な育児法のおかげである(ここが前-後論法)といわれ,データを示されると,簡単に信じてしまう人もいる。しかし実際にはその育児法を用いなくても(!)成熟という自然な原因で子どもはできるようになったのかもしれない,など。
 本書には,心理学的な裏付けとなる原理を知るだけでなく,どうすればそれを応用できるかを実際に訓練できる実用性もある。自力で演習・活用するのはやや難しいので,読者が学生ならば心理系などの適切な指導者について演習するのが望ましいだろう。

[内容や目次]

日本語版は上下2巻となっている。
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# by tsu2k | 2005-02-18 00:11 | 心理学本