昔話の深層

昔話の深層-ユング心理学とグリム童話
河合隼雄,1994,講談社+α文庫
ISBN 4062560613

 ユング心理学のトピックの一つである元型(アーキタイプ)の概念を使って,昔話を読み解くという趣旨の本。
 太母(グレートマザー),老賢人,アニマとアニムス,ペルソナ,トリックスターなどを使い,昔話がどうして人の心に響くのか,あるいは不思議な影響をもたらすのかを,なるほどと納得させつつ教えてくれる。新たに翻訳されたグリム童話の一部も掲載されていて,読み物としても面白い。
 なかでも女の子が母親から心理的に独立して,また自らも母になっていくという発達過程のたとえとして,ヘンゼルとグレーテルの話を読み解くなどは興味深かった。私(tsu2k)のゼミにはこの分野のテーマを選択した学生さん達がいて,一緒に調べ考える内に,「どうして継母を悪者にする話が多いのか?」とか「上辺の優しい顔で子どもを引き込み,怖ろしい裏の顔で子どもを食べてしまう魔女とはなにを象徴しているのか」などの疑問が,太母の特性からうまく明らかにされることを知り,感心するものも多い。
 ただし本書の著者の読み解きを理解するには,ある程度のユング心理学の知識が必要な気がする。最初に読む本としては難しいので,ユング心理学基礎を済ませた人向けであろう。

[内容や目次]
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# by tsu2k | 2005-02-17 00:48 | 心理学本

ユング深層心理学(マンガ)

マンガ ユング深層心理学
石田おさむ,1997,講談社+α文庫
ISBN 4062561808

 夢に興味のある人やユング独自の精神分析の概念,例えば集合的無意識論や元型といったものを知りたい人は,それらへのユング自身の関わり方を知ることで,より深い理解と共感が得られると思う。ユングの著作や弟子による解説本は難解だといわれるので,コンパクトに,こうした思想や概念の生まれた背景をかじるのには,マンガ形式の伝記として描かれた本書をさらっとながめるのがよい。その後ユング心理学系の著者(例えば河合隼雄・秋山さと子など)の本を読むと(もちろんそんなに簡単ではないが)ちょっとわかったような気がする。
 特にフロイトとのかかわりの変遷が,やはり精神分析の理論にあるいくつもの概念を思い浮かべさせるのがわかるあたりが面白いと思う。あるいはユングを支えたものがなんだったのかも,マンガならではの省略と要約で,却ってわかりやすくなっているようだ。

[ ミニ知識 ] カール・ユング(1875~1961)は,スイスの精神科医で,ブロイラーの弟子であり,精神分析の祖フロイトの弟子でもあった。医学にとどまらず錬金術,東洋哲学などの知識を援用した独自の精神分析学を構築した。
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# by tsu2k | 2005-02-16 00:18 | 心理学本

心理学が分かる 新版

心理学が分かる 新版
朝日新聞社,2003,アエラムック89
ISBN 4022741392

 心理学概論の最初の時間に「心理学とはどういうものか,あなたの持っているイメージを書いてください」として受講生に書いてもらっている。様々な回答があるが,一番多いのは,心を読み取るやりかたを学ぶものだという読心術イメージ,次がフロイトの精神分析を背景とした臨床心理系イメージで,なかには「占いの一部」だというものもある。
 では現代心理学の実態はどうなっているのか。一言でこれに答えるのはなかなか難しいが,少なくとも読心術や占いはしていない。比較的多くの賛同が得られそうな定義は「行動の研究をする学問」である。
 本書はより具体的に現実の心理学がなんであるかを概観するのに都合がよい。入門書というよりもガイドブックである。実際に研究・教育に携わっているそれぞれの分野の関係者が,自分の分野について雑誌記事風に概説をしている。かなりたくさんの分野があり,一言で心理学とはといってしまえない理由もわかってもらえるだろう。最後には入門書も含めて分野別のブックガイドもついている。初心者向きとはいえないものも多いがある程度その分野について深く知るには参考になる。

[目次や内容]

※ご注意:本書には旧版もあるが,内容的に新版をおすすめする。

[参考] 気まぐれ心理研(MY Main WEBです)の心理学常識チェック(実験室内あり)をしにいく
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# by tsu2k | 2005-02-15 01:06 | 心理学本

シネマの中の臨床心理学

シネマの中の臨床心理学
山中康裕(他編),1999,有斐閣ブックス
ISBN 4641086419

 臨床心理学の入門書ではあるが,心理臨床家たちの視線で見た映画ガイドだともいえる。もともと映画は臨床心理学的に面白い題材を扱うものが多いし,何を訴えるにしろ,(別にサイコホラーでなくても)そこには非常に心理学的に多様な側面が現れてくる。また教材としても相応しい映画も多い。
 本書は成長(各ライフサイクルごと:少年少女期から老年期まで),家族関係(夫婦,母子,きょうだいなど),内的世界(エロス,アニマなど)をテーマとしたさまざまな映画を教材として臨床心理学的さわりに触れようというものである。
 映画好きな私としては趣味と実益をかねて,実際の臨床心理学演習にも同様の試みを取り入れてきた。理論を学び考えることは重要である。しかし臨床心理的にも,心から興味を持ち共感し実感を味わうことも,同様に重要である。その目的にも映画はよい媒体だといえるだろう。

[目次や内容]
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# by tsu2k | 2005-02-14 21:02 | 心理学本

精神科へ行こう!

精神科へ行こう!:心のカゼは軽ーく治そう
大原広軌:著,藤臣柊子:絵,2002,文春文庫
ISBN 4167656469

 軽い読み物ながら,日常的な実用性は高いと思われる。
パニック障害を発症した著者自身の体験記,そして同じ症状を持つ漫画家の体験マンガ?が載せられている。そこに紹介されているリアルな症状の説明,治療の経過や治療法・薬との相性や実体験に裏付けられた実感のこもった気づき・悟り?の言葉はぜひご一読いただきたい。むしろ公式な教科書では知り得ないが,しかし本人にとっては重要な情報と心得の参考になると思う。
 (ただしあくまでも参考である。病気に関しても個人差は大きい。同一診断を受けたとしても,誰もが同じ経過・治療法・状態になるわけではないことはご注意いただきたい。また本書が書かれた99年までの治療法や薬物療法の情報に依存する部分がある=この辺は日進月歩なので,何年か後にはあてはまらくなるのは当然くらいのつもりでお読みいただきたい)。

[ミニ知識] パニック障害とは? 身体性の原因がないにもかかわらず,突然,動悸・心拍数が増加,息切れ,窒息感,身震い,めまいなど多くの症状を含む発作を起こすのが特徴。詳しくは以下のサイトを参考にされたい。

[目次や内容]

[参考] パニック障害教室
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# by tsu2k | 2005-02-14 20:47 | 心理学本